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半導体で一番儲かる工程はどこ?
利益率ランキングで徹底解説

半導体は「設計 → 前工程 → 後工程」という長い製造プロセスを経て作られますが、実は工程ごとに儲かりやすさ(利益率)がまったく違うことをご存じでしょうか。

投資家としてどの銘柄を選ぶべきか考える際、この「収益構造の違い」を理解しておくことは非常に重要です。この記事では、「どの工程が一番儲かるのか?」を利益率ランキング形式でわかりやすく解説します。

半導体づくりの全工程についての基礎知識はこちらの記事をチェック!
【前編】半導体づくりの各工程と関連銘柄総まとめ!前編:設計から露光まで

1. 結論:最も儲かるのは「検査・計測」「設計(EDA)」「製造装置」

半導体バリューチェーンの利益率を比較すると、以下のようなランキングになります。一般的に、物理的な製造(組み立て)に近い工程よりも、その前段階の「頭脳」や「高精度な目」にあたる部分の方が収益性が高くなる傾向にあります。

ランク 工程 儲かりやすさ 代表企業
1位 検査・計測 ★★★★★ KLA、レーザーテック
2位 設計(EDA) ★★★★★ Synopsys、Cadence
3位 製造装置 ★★★★☆ ASML、東京エレクトロン
4位 材料 ★★★☆☆ 信越化学、JSR
5位 ファウンドリ ★★☆☆☆ TSMC、サムスン
6位 メモリ ★☆☆☆☆ SK hynix、ミクロン
7位 後工程(OSAT) ★☆☆☆☆ ASE、Amkor

2. なぜ「検査・計測」が最も儲かるのか?

ランキング1位の「検査・計測」装置メーカーは、驚異的な利益率を誇ります。なぜこれほどまでに儲かるのでしょうか。理由は大きく3つあります。

理由①:微細化が進むほど検査量が爆増

2nm、3nmといった最先端プロセスでは、目に見えないレベルのわずかな欠陥が命取りになります。EUV(極端紫外線)時代の微細な回路では、従来よりも検査の難易度が上がり、必要とされる検査の回数も劇的に増えています。

理由②:不良が出ると損失が巨大

1枚のシリコンウエハには、完成すれば数千万円から数億円の価値があるチップが載っています。もし不具合を見逃して製造を進めてしまうと、そのすべてがゴミになってしまいます。メーカーは、不具合を確実に防ぐために、高額な検査装置にお金を惜しみません。

理由③:参入障壁が極端に高い

KLAやレーザーテックといった企業は、特定の検査分野でほぼ独占状態にあります。競合がいないため価格競争が起きにくく、営業利益率40%超えという、製造業としては異次元の数字を叩き出すことができるのです。

技術解説:EUVマスクと測長SEM

EUVマスク: 最先端のEUV(極端紫外線)露光で使われる原版です。非常にデリケートで、わずかな歪みも許されません。この検査装置で世界シェア100%を誇るのが日本のレーザーテックです。

測長SEM(CD-SEM): 回路の幅や間隔が正しく作られているかをナノメートル単位で計測する電子顕微鏡です。この分野では日立ハイテクが世界トップシェアを握っています。

3. 設計(EDA)は“ソフトウェアの美味しいビジネス”

EDA(Electronic Design Automation)は、複雑すぎる半導体設計を支援する自動化ソフトウェアです。SynopsysやCadenceといった企業がこの市場を支配しています。

  • ソフトなので粗利が高い: 物理的な製品を作って売るわけではないため、一度ツールを作ってしまえば販売コストは低く抑えられます。
  • 強固な寡占市場: 設計者は使い慣れたツールから離れられません(スイッチングコストが高い)。
  • AIブームが追い風: チップが複雑になればなるほど、EDAなしでは設計そのものが不可能になります。

結果として、営業利益率40〜50%級という非常に効率の良い収益モデルを実現しています。

4. 製造装置は“技術独占の世界”

ASML(露光装置)、東京エレクトロン(成膜・エッチング装置)、アプライド・マテリアルズ(AMAT)などは、1台数百億〜数千億円という超高単価な装置を販売しています。

高度な物理・化学の知識と精密制御の塊であるこれらの装置は、他社が容易に真似できるものではありません。「この装置がないと作れない」という状態を作っているため、安定して20〜30%台の利益率を維持し続けています。

5. 逆に儲かりにくい工程とその理由

一方で、売上規模は大きくても利益率が安定しにくい工程もあります。

  • ファウンドリ(TSMCなど): 「製造の王様」に見えますが、毎年のように数兆円規模の巨額な設備投資が必要です。この投資負担があるため、売上の割には利益率が(装置メーカーなどに比べれば)抑えられがちです。
  • メモリ(サムスンなど): 製品の差別化が難しく、価格が市況によって乱高下します。「好景気で大儲け、不景気で大赤字」を繰り返すため、長期的に安定した高収益は難しい構造です。
  • 後工程(OSAT): 前工程に比べると技術的な独占が難しく、低コスト競争に巻き込まれやすいため、利益率は一般的に低くなります(※ただし近年、先端パッケージの台頭で変化の兆しもあります)。

まとめ:投資家が注目すべきは「装置 × 検査 × EDA」

半導体ビジネスの中で、最も「安定的かつ高収益」なポジションにいるのは、「物理的な製造(組み立て)」そのものではなく、それを支える「ツールや魔法の杖」を持っている企業です。

特に「検査・計測」「EDA」「特定分野の独占装置」を持つメーカーは、たとえ景気が少し悪くなっても、半導体の進化(微細化・3D化)が続く限り、その需要が消えることはありません。

投資先を検討する際は、この「利益率ランキング」を一つの羅針盤として、その企業がバリューチェーンのどこで、どれだけ「替えの効かない武器」を持っているかに注目してみてください。

筆者プロフィール

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ムロタニ

京大生ブロガー。ファンダメンタルは苦手ですが、がんばってぼちぼち書いていきます!
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