業界研究 半導体・AI

【前編】半導体づくりの各工程と関連銘柄総まとめ!
前編:設計から露光まで

2026年に入り、半導体産業はAI・自動運転・再生可能エネルギー・データセンターなど多様な分野で不可欠な基盤となり、世界市場規模は1兆ドルに迫る勢いです。その製造工程は極めて複雑かつ高度であり、各工程ごとに専門性の高い企業がグローバルに活躍しています。

本記事では設計からパッケージング、材料、装置、後工程まで、主要な製造プロセスごとに日本・米国・韓国・TSMC(台湾)を中心とした関連上場企業(銘柄)を徹底解説します。各工程の概要とともに、関連企業の役割や強み、なぜその工程で重要なのかを詳しく解説し、投資家・業界関係者・半導体に興味のある方に向けて、2026年時点での最新動向とともにお届けします。

半導体製造工程の全体像

半導体製造は大きく「前工程(ウエハ上への回路形成)」と「後工程(チップ化・パッケージング)」に分かれます。さらに、設計・材料・装置・検査・テストなど多層的なサプライチェーンが存在します。それぞれの工程で世界トップシェアを持つ企業が存在し、日本・米国・韓国・台湾(TSMC)がグローバル競争を繰り広げています。

1. 設計(Design/EDA)工程と関連銘柄

「設計」の概要

半導体チップの設計図をつくる工程です。回路の論理設計、配線の配置、電力・熱・信号遅延などのシミュレーション、フォトマスクデータ(半導体製造において使用される微細な回路パターンを基板に転写するためのデータ)の生成を主に行います。建物で言えば「建築設計図」にあたります。ここが間違うと後工程が全部やり直しになるため、極めて重要なプロセスです。

設計分野は米国企業が圧倒的なシェアを持ち、NVIDIA・AMD・Intel・Qualcomm・Appleなどが最先端チップを設計しています。EDAツール(半導体設計を支える設計自動化ソフトウェア)はSynopsysとCadenceが寡占し、ARMはCPUアーキテクチャの標準です。

企業名 主な役割・強み なぜ重要か
NVIDIA 米国 GPU・AIアクセラレータ設計 AI半導体の絶対的リーダー
AMD 米国 CPU・GPU・AIチップ設計 サーバー・PC向けで高い存在感
Intel 米国 CPU・FGPA設計、製造も展開 x86 CPUの巨人、設計・製造両面で影響力
Qualcomm 米国 スマホ向けSoC設計 モバイルSoC「Snapdragon」の覇者
Apple 米国 独自設計SoC(Mシリーズ等) 自社製品向けに特化した最先端設計
Synopsys 米国 EDAツール・IPコア 設計自動化ツールで世界最大手
Cadence 米国 EDAツール 設計自動化ツールで世界2位
ARM 英国 CPUアーキテクチャIP モバイル・IoT・サーバー向けで標準
ソシオネクスト 日本 ファブレスSoC設計 映像・通信・車載向けSoCで成長
ルネサスエレクトロニクス 日本 車載・産業向けMCU/SoC設計 車載半導体で世界有数
Samsung Electronics 韓国 メモリ・ロジック設計 メモリ設計力とファウンドリ事業
SK hynix 韓国 メモリ設計 DRAM・NAND設計
TSMC 台湾 設計支援(Design Enablement) 顧客の設計最適化をサポート

2. マスク・レチクル工程と関連銘柄

「マスク・レチクル工程」の概要

マスク・レチクル製造は、設計データをもとに露光工程で使う「ガラスの型」を作る工程です。チップの原版にあたり、設計と前工程をつなぐ極めて重要なプロセスです。1枚の品質がウエハー上の何千ものチップの良否を左右します。

フォトマスクとは?

フォトマスクは、回路パターンが描かれた「原版」のようなものです。このフォトマスクに光を通し、レンズで縮小してシリコンウエハ上に照射することで、極めて微細な回路を転写します。写真の現像でいう「原版」にあたる、極めて精密な部品です。

フォトマスク市場はテクセンド(旧トッパン)と大日本印刷が日本勢の二大巨頭。Photronicsが米国・アジアで展開。HOYA・信越化学はマスクブランクスで世界トップクラス。EUV対応・高精度化が今後の成長分野です。

企業名 主な役割・強み なぜ重要か
テクセンド(旧トッパン) 日本 フォトマスク外販市場で世界首位 グローバル拠点、EUVマスク対応
大日本印刷(DNP) 日本 フォトマスク・マスクブランクス 高度な微細加工技術、サプライチェーン強化
Photronics 米国 外販フォトマスク世界2位 北米・アジアで強い顧客基盤
HOYA 日本 マスクブランクス世界トップクラス 高純度石英ガラス、EUV対応
信越化学工業 日本 マスクブランクス上位供給 高精度材料(OMOG等)の安定供給

3. 前工程(ウェハ加工)

ここが半導体製造の本丸で、シリコンウェハの上に回路を何十層にも積み重ねていく工程です。微細化が進むにつれ、その難易度は飛躍的に高まっています。

3-1. ウエハ製造工程と関連銘柄

「ウエハ製造」の概要

シリコンウエハは半導体の「土台」です。シリコンの塊を円盤状に加工し、表面を鏡のように磨き上げます。ウエハの品質は最終チップの性能・歩留まりに直結します。300mmウエハが主流ですが、近年はSiC・GaNなどパワー半導体向け新素材も注目されています。

↓シリコンウエハのイメージ

シリコンウェハーのイメージ

市場は日本の信越化学工業とSUMCOが世界シェアの過半数を占める「日本勢の独壇場」です。最先端ファブも日本勢の高純度ウエハに依存しています。ウエハの大口径化・高純度化・新素材対応が今後の成長ドライバーです。

企業名 主な役割・強み なぜ重要か
信越化学工業 日本 シリコンウエハ世界最大手 300mmウエハの安定供給、最先端対応
SUMCO 日本 シリコンウエハ世界2位 先端ウエハ供給、再生ウエハも強み
GlobalWafers 台湾 世界3位、欧米市場にも強い 買収で規模拡大、TSMC等に供給
SK siltron 韓国 韓国最大手 韓国ファブ向けシェアとグループ内需要
Siltronic ドイツ 高品質ウエハ、欧州拠点 欧州・グローバル展開の強み
ローム 日本 SiCウエハ(SiCrystal社) EV・再エネ向けパワー半導体用リーダー

3-2. 成膜と関連銘柄

「成膜」の概要

ウェハの上に薄い膜(絶縁膜や金属膜)を形成する工程です。ウェハの上に均一な薄い層をスプレーで吹き付けるイメージです。CVD、PVD、ALD(原子層堆積)など多様な手法があり、微細化・3D化に伴い高精度・高均一性が求められます。

成膜装置はアプライドマテリアルズ(AMAT)、ラムリサーチ、そして日本の東京エレクトロンが「世界三強」として君臨しています。日本の中堅メーカーも有機EL・太陽電池・MEMS等で存在感。成膜技術の進化は微細化・3D化・パワー半導体対応に不可欠です。

企業名 主な役割・強み なぜ重要か
アプライドマテリアルズ 米国 成膜装置世界最大手(総合力) PVD・CVD・ALD等での幅広い対応力
ラムリサーチ 米国 CVD・ALD・電解メッキ 先端メモリ・ロジック向け高精度成膜
東京エレクトロン 日本 ALD・CVD・PVD装置で世界上位 バッチ式ALD等独自技術、高生産性
昭和真空 日本 真空蒸着装置、スパッタ装置 有機EL・半導体向け特有プロセス
長州産業 日本 蒸着・スパッタ装置 太陽電池や有機デバイス向け実績
コメット 日本 マグネトロンスパッタ装置 多元成膜・自動化技術

3-3. 露光(フォトリソグラフィ)と関連銘柄

「露光」の概要

光を使って回路パターンを焼き付ける工程です。「写真の焼き付け」や「スタンプで模様を押す」イメージです。EUV(極端紫外線)露光装置の登場により、2nm以下の微細化が可能になりました。装置だけでなく材料の感光材(フォトレジスト)の品質も極めて重要です。

EUV露光装置はオランダのASMLが事実上の独占企業で、TSMC・Samsung・Intel・Rapidusといった最先端の半導体メーカーには欠かせない装置です。一方、日本メーカーはEUVではなく、ArF液浸やArFドライといった1世代前の露光装置で独自の強みを築いています。東京エレクトロンは、EUV露光に必要な塗布・現像装置で世界シェアほぼ100%を握っており、EUV時代でも存在感は圧倒的です。さらに、露光工程で使うフォトレジスト(感光材)は、東京応化、JSR、信越化学、住友化学、富士フイルムの日本5社で世界シェア約9割。EUV対応の高性能レジストをめぐって、各社の技術競争が激しく進んでいます。

企業名 主な役割・強み なぜ重要か
ASML オランダ EUV露光装置で世界独占 2nm以下の微細化に不可欠(シェア100%)
ニコン 日本 ArF液浸露光装置 ASML互換機含む先端・成熟プロセス両対応
キヤノン 日本 ArFドライ露光装置 成熟プロセスや特定用途向け独自技術
東京エレクトロン 日本 コータ/デベロッパ(塗布現像) EUV用塗布現像装置でシェアほぼ100%
ギガフォトン 日本 リソグラフィ用光源 ASML等露光装置メーカーへの重要供給元
東京応化工業 日本 フォトレジスト(EUV含む) EUVレジスト市場でのリーダーシップ
JSR 日本 フォトレジスト世界首位級 金属レジスト等、先端プロセス材料の先端
信越化学工業 日本 フォトレジスト、ウエハ供給 先端材料の垂直供給体制
住友化学 日本 液浸ArFレジスト高シェア メモリ(DRAM等)向けでの高い依存度
富士フイルム 日本 ネガ型レジスト、CMP材料等 材料面での総合的なソリューション能力

中編(エッチング・洗浄・ダイシング・ボンディング)に続きます!

筆者プロフィール

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ムロタニ

デジタルネイティブ世代の現役京大生。ファンダメンタルは苦手ですが、がんばってぼちぼち書いていきます!
お問い合わせ・要望等はXのDMにおねがいします↓

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